はじめに
こんな人向けです
- ゲームの効果音を素材集から探そうと思っているが、どんな音を使ったらいいか分からない
- ゲームの効果音を作ろうと思っているが、どんな音を作ればいいか分からない
この記事では、ゲーム効果音をいくつかの観点から分析して、ゲームに合う効果音とは何かを考えていきます。
サウンドってイマイチ分からない
Twitterを見たりコミケやデジゲー博などのイベントに行ったりすると、趣味でゲームを作っている人が本当に多いことに気づかされます。専門学校でプログラミングを学んでいる人から、仕事でも趣味でもゲームを作っている人、グラフィックやサウンドが専門だけどゲーム制作に手を出した人など、いろいろな境遇の人がいてとても面白いです。
中でも多いのが、プログラミングが専門でありながらグラフィックもこなす人です。専門ではないはずなのにとてもクオリティの高い画作りをする人も多くて、いつも驚きながら作品を見ています。
ですが、SEやBGMなどのサウンドも手作りする人は、絵を自分で描く人よりは少ないのではないでしょうか。音楽制作ツールが高価だったり、何から始めていいか分からなかったり、サウンド制作は0から始めるにはいろいろとハードルが高いです。
そして何より、グラフィックは多くの人が注目する要素ですが、サウンドはそうではありません。音を出さずにゲームをする人もいますし、音を出していたとしても、ゲーム中にいつでも音を意識している人はなかなかいないと思います。
そこで「いざサウンドを作ろう!」と思っても、サウンドの事を今まであまり意識してこなかったので、何を手掛かりにしてどんな音を作っていけばいいかよく分からないですよね。
ぜひ好きなBGMとSEを鳴らしてもらうので良いと思いますし、それでとてもイキイキとしたサウンドを実装する人も多いです。でも、「そうは言っても何か選ぶ基準がほしい!」と言いたくなるときがあると思います。
この記事では、僕が今まで経験してきたことを元に、「こんな効果音は大抵の場合こういう印象を与えるよ」ということを書いていきます。「数ある効果音の中からどうやって絞り込んでいくか」、「AとBの効果音、ゲームにより合うのはどちらか」などの問題に直面した時、ここに書いたことがヒントになったら幸いです。
音の要素
音には、音の三要素というものがあります。
(参考)音の三要素(音の大きさ、音程、音色)について知ろう!(スガナミ楽器)
詳細は上の記事を見てもらうと良いと思うのですが、ここで伝えたいことは、音というものを分解して考えてみるといいよ、ということです。
グラフィックが線、色、構図などの要素で構成されているように、音もいくつかの要素から成り立っています。
音の三要素は大きさ・音程・音色ですが、今回の記事では効果音の要素を高さ・デフォルメ度・高さの移り変わりの3つの観点から見ていきます。
音の高さ
音に高低があることは皆さんご存知だと思います。高い音と言えば時代劇で刀と刀がぶつかる「キーン」という音、低い音と言えば遠くで鳴っている花火の「ドーン」という音が挙げられますね。
さて、この音の高さはHz(ヘルツ)という単位で表されることがあります。音は空気の振動の波ですが、その振動が1秒間に何回起きているか、というのがHzの数値です。そして、Hzの数値が高ければ高いほど音は高く聞こえます。
高めの音は聞こえやすい
下記のサイトによると、人間の耳は2kHz~4kHzぐらい(例えば赤ちゃんの鳴き声)の周波数の音を最も敏感に聴き取るようです。
可聴領域の中でも、人間の耳が聞きとりやすい、感度のいい周波数帯があります。もっとも聞きとりやすいのは、2,000Hzから4,000Hzの高さの音。この周波数には、赤ちゃんの泣き声や、女性の悲鳴、家電製品の警告アラームなどの音があります。
産総研・サイエンス・タウン 暮らしの安全と快適のために 「人間の耳に合わせた国際基準?」
なぜ高音域をよく感じ取るのかは定かではないようですが、下記のサイトに1つの説が載っています。
なぜかは分かっていないものの、この「人間は高めの音がよく聞きとれる」という性質はゲームの効果音に応用することができそうです。 例えば、プレイヤーにしっかり認知してもらいたい重要度の高い効果音は、高めの音を使うと良いですね。
- アクションゲームでコンボが決まった時の成功音
- 強敵が迫ってくるときのサイレン音
- 制限時間が残り10秒になったことを知らせる音
また、このような高音は聞き取りやすい反面、ずっと聞いていると耳が疲れてしまいます。高音の効果音、あるいは高音域が目立つBGMを使う際には、音量と使用する頻度を調整しましょう。
大きいものは低い音、小さいものは高い音
もう一つ、音の高低を利用した考え方です。ゾウとハムスター、それぞれが歩く時の効果音を想像してみましょう。現実世界ではどちらも歩くときに大した音は立てないと思いますが、ゲームで鳴らすための「ゾウらしい」「ハムスターらしい」音を想像してみます。
どんな音が聞こえてきたでしょうか。僕が思いついた音は、ゾウは「ドシーン、ドシーン…」ハムスターは「チョコチョコチョコ…」という音でした。2つの音の違いは明確ですね。
ゾウは地響きのような低い音を出して歩きそうです。ハムスターはその逆でとても高い音のイメージ。なぜこのような音がイメージされるかと言えば、「大きいものから発せられる音は低く、小さいものから発せられる音は高い」というイメージがほとんどの人に備わっているからです。
これは、今まで生活する中で聞いてきたあらゆる音の経験からそのようなイメージが形成されるのだと思います。
例を挙げると、産まれたての赤ちゃんの声の方が大人の声より高いですよね。これは、声変わりの時期を迎えると 声を出すための声帯の長さが長くなるからです。声帯が大きく(長く)なればなるほど低い音、小さく(短く)なるほど高い音が出しやすくなります。
ゲーム効果音に応用するなら、音の高さでプレイヤーに与える印象を変えてみましょう。
例えば、以下のように使う効果音を考えることができます。
「小さい、かわいい、軽い」などの印象を与えたい場合→高い音の効果音
「大きい、いかつい、重い」などの印象を与えたい場合→低い音の効果音
といっても、考えるまでもなく小動物のかわいいキャラの歩く音には高い音をあてる人がほとんどだと思いますが…考え方の一つとして!覚えておいてはいかがでしょうか。
デフォルメ度
ゲームのグラフィックには、デフォルメされた登場人物や背景が使われますね。人間のキャラクターで言えばリアル寄りの8頭身(デフォルメが弱め)から、体に対して頭がとても大きい2頭身(デフォルメが強め)まで様々なデフォルメが見られます。
これと同じように、効果音やBGMにもデフォルメがあります。
例えば、格闘ゲームを思い浮かべてみてください。大抵の格闘ゲームではファイターのパンチが相手にヒットした時「バシッ」という感じの音が鳴ります。でも、現実世界でパンチした時に、あれほど強烈な音は鳴らないですよね。ゲームの効果音も目的に応じてデフォルメされているということです。
もう一つ例を挙げると、スーパーマリオブラザーズの「ぷ~ん」というジャンプ音。あの音もマリオの世界観だからこそマッチしますが、同じ音を「龍が如く」のようなリアル寄りのゲームで使うとおかしな感じになってしまうでしょう。これは、グラフィックのデフォルメとサウンドのデフォルメの度合いが違いすぎることによる違和感です。
ゲームの世界観がより引き立つような効果音を見つけるために、
- 今自分が作っているゲームのグラフィックのデフォルメ具合はどれぐらいか
- それに合う音のデフォルメ具合はどれくらいか
などの観点で効果音を考えてみるのはいかがでしょうか。
でも、この原理を逆手に取れば、あえてデフォルメ度合いが違う効果音を鳴らすことでコミカルさを演出することもできそうです。その場面での効果音の役割に応じて、いろいろなデフォルメ具合の音を試してみましょう。
音の高さの移り変わり
一見シンプルに聞こえる効果音でも、無意識のうちにプレイヤーに様々な印象を与えています。下の2つの効果音を聴き比べてみましょう。
1つは音の高さが上がり、2つ目は下がっています。 この2つのうち、ゲーム中で何か成功を遂げた時に鳴らすとしたらどちらの効果音にしますか?
僕だったら、音が上がる方の効果音を使います。 こちらの方が前向きな印象を受けるからです! 音楽のメロディなどでもそうなのですが、音が低いところから高いところに移ると盛り上がります。 大抵の歌ではAメロ・Bメロではメロディは低めの音で、サビで一番高い音を歌います。
あらゆる音楽で、盛り上げるときには低い音から高い音への移り変わりが起こります。
音が上がる場合と下がる場合を聴き比べて、僕が受ける印象を書き出してみました。 ぜひ皆さんも、2つの音の印象の違いを考えてみてください。
音が上がる
明るい 前向きな 始まる 広がる 上昇する
音が下がる
暗い 後ろ向きな 終わる 収束する 落下する
こんなところでしょうか。共感できる人が多いのではないかと思います。 もし「自分は全く違う印象を受けるけど!」という人がいたら、ぜひその受けた印象を教えてください!
音の高低はそのまま位置の高低の印象にも通じるところがあります。 マリオのジャンプ音はぷ~ん⤴と上昇しますね。この音は、低いところから高いところに上がっているよということを教えてくれています。 逆に落下する時に音をつけるとしたら、ヒューン⤵と下がる音がぴったりです。
番外編:SEとBGMのバランス
SEとBGMの音色
人間の耳には、同じような高さの音は混ざって聞えてしまいます。重要な効果音も、BGMの種類によってはかき消されてしまうことがあるのです。 それを避けるために、実際にプレイしながら効果音が聞き取りにくくなっていないか確認し、聞き取りにくくなっていたらBGMかSEを差し替えましょう。
また、BGM側でSEと似たような音色を使っていないかどうかよく聴いて確かめてみましょう。 特に、遊び心で効果音的な音が入っているBGMを使用する際は要注意です。 プレイヤーの誤解を招いてしまうような効果音が混じっているBGMは避けた方ががいいですね。
SEとBGMの音量
時々、SEに対してBGMの音が大きすぎるゲームを見つけます。 SEはプレイの手ごたえにダイレクトに影響することがある一方、BGMはどちらかというとプレイヤーの無意識に訴えかけるような存在です。 SEをしっかり聴かせるためにも、BGMはSEを隠してしまわない音量に調整しておきましょう。
終わりに
なるべく一般論を書いたつもりでしたが、かなり主観的な内容になっていまいました。もし「全く納得できない!」という点があれば、僕の勉強にもなりますのでぜひ教えてください。また質問や意見なども受け付けています。
Twitter : @tsuyomi0508
E-mail : tochiotome0508@gmail.com
効果音で悩み中のゲーム制作者の方々に少しでも突破口をプレゼントすることができたならとても嬉しいです。気持ちいいゲームサウンドが作れるようお互い頑張りましょう!