1人、または少人数でゲームを制作されている方は、ゲーム中で使うBGMをフリー素材集から選んだりすることが多いと思います。 求めるBGMがイメージできていればいいのですが、そうではない時は選ぶのに時間がかかってしまいますね。 今回は、求めるBGMがイメージできていない場合に使えそうなヒントを書いてみたいと思います。
山と谷を意識する
まずは、この記事のタイトルにもなっている「山と谷」について。 といっても、「何事もメリハリが肝心」というありきたりな話です。どんなに面白いものでも、ずっと同じようなことが続いていると飽きてきてしまいます。
飽きがこないようにするために、例えばアクションゲームでは、
- 敵がたくさん出現する危険なゾーンと比較的安全なゾーンを交互に登場させる
- ステージが進むにつれて徐々に敵を強くしていき、マンネリ化させない
- 大ボスの前に今までにないような長い階段を設置し、特別感を演出する
などの工夫がされていたりしますね。 注意して見てみると、普段何気なくプレイしているゲームにも、より楽しさを持続させるためのエッセンスがところどころに散りばめられていることが分かります。
山になるBGM、谷になるBGM
さて、このような 山と谷の効果を上げるためにBGMはどんなお手伝いができるでしょうか。1番シンプルな方法は、BGMによってゲームの山をより盛り上げ、ゲームの谷をより落ち着けることです。 ゲームで実現したいことを、BGMで後押ししてあげましょう。
そのためには、どんなBGMが山・谷なのかを知っておく必要がありそうですね。 ここでは4つの観点からBGMを分析して、山のBGM・谷のBGMの見つけ方を探っていきます。
- メロディの存在感
- テンポ
- 楽器数
- ドラム・パーカッション
それぞれについて詳しく書いてみます。
メロディの存在感
音楽においてメロディは主役です。上がったり下がったり、1つの音を長く伸ばしたり、素早い音符で勢いよく駆け抜けたり…様々な音の動きを駆使して感情を表現します。 メロディの存在感の強弱はとても感覚的なものですが、
- メロディを担当する楽器の音色
- メロディの音量
- メロディの動きの大きさ
などを複数曲で聴き比べて、どの曲のメロディがより印象に残ったか感じてみてください。 一つの指標として、メロディが口ずさめるかどうかはとても参考になります。1つの主となるメロディが存在せず、いろいろな音が絡み合ってぼやーっとした印象の曲は、メロディを口ずさもうとしても上手くいきません。そんな曲は、メロディの存在感が弱いです。
メロディは、聴き手に何かしらのメッセージを主張しています。「強敵が現れた。さあ、君の腕前を見せてくれよ!」「もう少しでクリアだから、頑張って!」「大切な味方を失ってしまった。すごく悲しいです」・・・などなど。これってどういうことなのか一言で表すと、メロディはプレイヤーに「目的」を伝えてくれている、ということではないでしょうか。
逆に言えば、メロディの印象が薄い曲・メロディがない曲は、あまり積極的にプレイヤーに目的を持たせようとせず、選択をプレイヤーに委ねていると感じることもできます。
テンポ
テンポの速い曲の方がプレイヤーの興奮を誘いやすいと感じます。 「心拍数が速い=興奮している」ということと何か関係がありそうです。
そんな性質を利用して、
- 山となるシーン → テンポが速めの曲
- 谷となるシーン → テンポが遅めの曲
を使ってみます。
例えば、たくさんの敵の攻撃をかいくぐり、やっとたどり着いた安全地帯で流すBGMにはどのようなテンポの曲を選べば良いでしょうか。 プレイヤーはここに来るまでに、緊張感を持続させてストレスも溜まっているので、その安全地帯ではリラックスできることが求められます。 でも、ここでテンポの速い曲を流してしまうと、せっかくの休憩ポイントであるにも関わらずプレイヤーはリラックスできません。
ゲームをプレイしていく中で、テンポの速い曲ばかり、または遅い曲ばかりにならないようBGM計画を練ってみましょう。
楽器数
たくさんの楽器が鳴っているほど音楽は盛り上がっている=「山を作っている」と考えることができます。 J-POPのサビを想像してもらうのが一番わかりやすいと思います。ほとんどの楽曲で、サビではAメロ・Bメロの時に比べて楽器数が増えます。
ゲームでも、ここぞというシーンで楽器数の多い曲を流してみましょう。プレイヤーに高揚感を味わってもらえるはずです。その効果をより高めるためにも、谷になるシーンでは楽器数を抑えた曲を使用しておくと良いです。
ドラム・パーカッション
いわゆる打楽器です。 この打楽器のパートは、無意識のうちにゲームプレイのリズム感に影響を与えているようです。
BGMを流しながらゲームをプレイしてみてください。流れてくるドラムなどの打楽器のリズムは心地いいでしょうか?それとも、プレイヤーの操作を無視して勝手なリズムを刻んでいるでしょうか?
僕の経験上、
- コントローラーでたくさん操作する場合 → 打楽器がたくさん鳴っていた方が気持ちいい
- コントローラーでの操作が少ない場合 → 打楽器も少なめ、またはない方が気持ちいい
ということが多くのゲームに当てはまります。例えば、がちゃがちゃボタンを押すアクションなら打楽器もたくさん、考えて考えて最後にポチっとボタンを押すパズルゲームなら打楽器は少なめ、という感じですね。
前後のBGMとの関係性
どんなBGMを使うにせよ、前後のBGMとの関係性もとても重要です。 テンポで言えば、BPMが60から120になるとテンポが速くなったと感じますが、180から120になると遅くなったと感じます。 同じBPM120なのに、受ける印象が変わります。
その他の観点も同じで、楽器数が多いか少ないかなども、前後に流れていた曲によって左右されます。 よりBGMによる演出を凝りたい場合は、まず最初にゲームに必要なBGMを洗い出し、どのBGMを山・谷にするのかを決めておくといいでしょう。
まとめ
ゲームの山と谷に合わせて、BGMも盛り上げたり落ち着けたりした方がプレイヤーにとって心地よい、という話を書いてきました。
以下の表は、どんなBGMが山で谷かをざっくりまとめたものです。
山を作るBGM | 谷を作るBGM | |
メロディの存在感 | 強い | 弱い |
テンポ | 速め | 遅め |
楽器数 | 多め | 少なめ |
ドラム・パーカッション | 目立つ | 目立たない |
終わりに
どんなBGMを使えばいいか悩んでいる人向けに、この記事を書いてみました。
ただ、この記事に書いてある通りにした場合としなかった場合で、そこまでゲームのクオリティに差が出てくることはないと思います。 それは、見やすさがゲームプレイに関わってくるグラフィックに比べて、BGMはゲームプレイに大きく影響を与えるようなことは少なくて、冒険しやすい部分だからです。 ぜひ色々なジャンルの音楽をゲームに当ててみて、印象の違いを感じてみてください。
中には、この記事に書いたようなアレコレを考えずに、自分のこだわりを前面に出してBGMを選定している人もいます。 そして、そんなスタイルでBGMを決めることで、他にはない独自の世界観を演出しているゲームを作り上げていたりします(戦闘時に世界の民謡のアレンジが流れるRPGなんかもプレイしたことがあります)。
でも、もしBGMに迷ってしまったら、
- そのシーンはプレイヤーにとって山となるか谷になるか
- どれぐらい大きい山、または深い谷なのか
を意識してみると、そのシーンに有効なBGMがどんなものなのか見当がつきやすくなると思います。 ぜひ試してみてください!